長谷川(はせがわ)地ぞう (境)

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  1. 境関所

 今から、三百年以上(いじょう)も昔、境に関所があったころの話です。
 そのころの富山県は越中とよばれ、となりの新潟(にいがた)県は越後(えちご)とよばれていました。
 境は、越中と越後との国ざかいにあり、海と山とが近づいているので、となりの越後の回へ出入りするのには、かならずこの境を通らなければなりませんでした。越後から来るあやしい人や、鉄ぽう、火薬などの武器(ぶき)が、運ばれたりしないように見はるのに、境はとてもつごうのよい場所でした。そこで、境に関所がもうけられたのでした。この関所は、有名な「箱根(はこね)の関所」よりも大きかったそうです。

 関所には、関所奉行(ぶぎょう)というえらい役人がいました。二代目関所奉行になったのは、長谷川宗兵衛(はせがわそうべえ)という人でした。その長谷川家にまつわる話に、次のような悲しいものがあります。
 宗兵衛には、一人の女の子と、三人の男の子がいました。
女の子の名前は、多恵(たえ)といい、男の子は、上から宗左衛門(そうえもん)、伊左衛門(いざえもん)、宗吉(そうきち)といいました。
 父の宗兵衛は、たいへん仕事熱心(ねっしん)な人でした。
「てきにせめられたらたいへんだ。」
と、越中の国を守るために、一生けんめい仕事をしていました。そして、
「もっと越後(えちご)の様子を知りたい。」
と考え、そのころのとの様、前田利常公(としつねこう)のゆるしをもらって、むすめの多恵(たえ)を市振(いちふり)へよめ入りさせました。本当は、他の国へよめに行くことは、きんしされていたのですが、との様に、

「越中(えっちゅう)の国を守るために、特別にゆるす。」
と言われ、宗兵衛(そうべえ)との二人だけのひみつにすることになったのです。
 越後によめに行った多恵は、山菜(さんさい)などを売り歩く百しょうにたのんで、越後の様子をくわしく書いた手紙を父、宗兵衛のところへ時々とどけていました。

 何年か後のことです。
境の善(ぜん)の烝(じょう)という人が、むすめを越後の能生(のう)へよめ入りさせたことが、役人に知れてしまいました。おきてをやぶった善の丞が、役人に取り調べをうけていた時、
「お奉行(ぶぎょう)だって、むすめを越後によめに出しているではないか。」
と、つい口をすべらしたために、いくら奉行であっても、おきてやぶりということで、宗兵衛はつかまってしまいました。

 その時には、やくそくしてくれた前田利常公は、もうなくなっており、新しいとの様、前田光高公(みつたかこう)になっていました。
宗兵衛は、むすめをよめにやったわけや、前のとの様にゆるしをもらっていたことを、取り調べの役人にくわしく話しました。しかし、そのことをしょうめいするものは、何もありませんでした。そのころ、きまりをやぶったものは、切腹(せっぷく)に決まっており、けつきょく宗兵衛(そうべえ)だけでなく、三人の子どもも切腹を命じられました。
 長男の宗左衛門(そうざえもん)や次男の伊左衛門(いざえもん)は、大きくなっていましたが、三男(さんなん)の宗吉(そうきち)は、まだ五才でした。
「おきてをやぶってまでも越中(えっちゅう)のためにつくしたのに、何ということだ。わたしだけならまだがまんできるが、小さい子どもたちまで切腹とは…。」

父宗兵衛は、残念(ざんねん)で一晩中泣(な)き通しました。
「せめて、宗吉だけでも助けてやりたい。」
宗左衛門も伊左衛門も、
「何とか、かわいい弟だけでも助けてやる方法はないものか。」
と、いろいろ考えました。そして、あるお寺のお坊さんに、宗吉をかくまってくれるようにお願いに行きました。事情を聞いたお坊さんは、こころよく引き受けてくれました。
 父と二人の息子(むすこ)は、
「これぞ思い残(のこ)すことはない。」
と、宗吉の幸せをねがいながら死んでいきました。

 しかし、ある日のことです。父や兄たちのねがいもむなしく、お寺へ役人が訪(おとず)れました。たまたま、近くに宗吉を見つけ、
「その手どもは、どこのものか。」
「この寺には、こんな子どもはいなかったはずだが。」
と、お坊さんをきびしく取り調べました。あまりのきびしさに、お坊さんは、とうとう本当のことを言ってしまったのでした。小さい宗吉(そうきち)は、かわいそうにその場で、打ち首にされてしまいました。どんな小さい子どもでも、役人はゆるすことはなかったのでした。

 そのできごとを聞いて、あまりの仕打(しう)ちにかわいそうに思った境の人たちは、親子の地ぞうをつくり、長谷川(はせがわ)地ぞうと名づけて、命日(めいにち)やお盆(ぼん)には、お花をそなえて、おまいりをかかすことがありませんでした。
 その地ぞうは、現在、護国寺(ごこくじ)の境内(けいだい)で、地区の人々に大切(たいせつ)に守られています。

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